木村の re:Invent 2022 4 日目: タコスの売上を伸ばせ!

こんにちは!GIMLE チームで MLOps サービスを担当している木村です。

4 日目となる今日は実質最終日となります。 夜に re:Play というパーティに参加後、午前 4 時前にはホテルを後にし、帰国が始まります。

そんなラスベガス最後のランチをどうしようかと考えていた際、昨日の散歩中に見つけたメキシカンレストランを思い出しました。 きっとあの店にはタコスがあるに違いない、そうに決まっている、どうしてもタコスを冷えたドクターペッパーで流し込みたい!という衝動に駆られたため、柴田を誘い食べてきました。

注文スタイルはサブウェイと同様でした。ソフトタイプのトルティーヤにカルニタス、サルサ、チーズ、グァカモレ、レタスをチョイスし、最後にタバスコソースをたっぷりかけていただきます。

一口食べた瞬間、全身が震えるほど美味しかったのは言うまでもありません。どうしてこんなにうまいのか。
もっと日本でもタコスを食べられるお店が増えてほしいと願うばかりです。

前置きが長くなりましたが、今日の内容は「How Taco Bell is improving digital availability with ML forecasting」というセッションの内容から、タコベルが機械学習でタコスの売上を伸ばした方法について書いてみようと思います。

タコベルの戦略

タコベルというお店ですが、日本では少々馴染みがないお店かもしれません。
タコベルは、1962 年にアメリカで創業された、タコスを扱うファストフード店です。 日本には 1980 年代に一度上陸したようですが、すぐ姿を消し、再上陸したのが 2015 年だそうです。現在、日本に 10 店舗ほどチェーン展開しています。

2020 年、コロナウイルス(COVID-19)が世界中を襲いました。これにより、アメリカではタコベルを含む様々な飲食店で食事をおこなう顧客が減少してしまいます。 一方でデジタルチャネルによる消費が急速に伸びはじめました。インターネットを使ってよく通っていたお店のメニューを注文することができ、配達してもらえるようになり、家でもお店の味を楽しめるようになりました。 タコベルもデジタルチャネルを積極的に活用し、今まで以上に売上を伸ばしたいと考えます。

デジタルチャネルをうまく活用したい

タコベルは下記 4 つのデジタルチャネルを持っていました。

  • モバイル端末やウェブアプリとしての E コマース
    • スマートフォンアプリなど
  • キオスク
    • 顧客が店頭で注文する際に利用する端末
  • 1st Party Delivery
    • 店からの配達
  • 3rd Party Delivery
    • Uber Eats などの配達

しかし、他のハンバーガー屋やピザ屋の状況と比較すると、タコベルのデジタルチャネル販売割合は低いことがわかりました。 その理由を調査していくと、店舗のデジタルチャネルがオフラインになっている時間の割合が大きいことがわかりました。

なぜ店舗のデジタルチャネルのオフライン割合が大きいか調査をしてみると、配達方法が複数あることによるシステム側での問題や、店舗そのものがなんらかの理由で受付できない状態になっているなど、理由が様々あることがわかりました。 まずは店舗の POS 端末のモニタリングをおこない、より多くの注文を受け付けられるよう改善策を考えます。タコベルでは下記 3 つのアプローチでデータ分析の実施を試みました。

  • ステークホルダーの可視性を向上させる
  • データサイエンスを活用する
  • リアルタイムで POS 端末をモニタリングする

この 3 つのアプローチから、下記のシステムを構築しました。

  • POS 端末のデータを Kinesis で収集
  • 収集したデータは、Glue を使ってデータ分析ができる状態に変換
  • データを Amazon Forecast に取り込み、POS 端末の動作予測を実施
  • モニタリング結果と予測結果をアラートで発報

POS 端末の動作状況を収集して予測することで、店舗のオフライン状態に関する分析ができるようになり、オフライン状態をできるだけ減らせるようになったことで売上の向上につなげることができました。

そしてこのシステムの実装は 3 週間で行われました。比較的短時間で売上の向上に繋がるシステムの実装をおこない、データを分析可能な状態にできたのは、SageMaker ではなく Amazon Forecast を利用したという点が大きく作用していると感じます。

Amazon Forecast

今回、タコベルでは Amazon Forecast を利用して時系列データの予測を実施しました。 Amazon Forecast はフルマネージドのサービスで、アイテムの過去データや関連データ、メタデータを利用して予測をおこないます。 会場では大きな特徴として下記 3 つが紹介されました。

  • NoCode または LowCode でモデルビルドを自動化する
  • 簡単にデプロイと運用ができる
  • ビジネスインサイトを抽出する

上記については Amazon Forecast の特徴紹介ページにも記載がありますので、割愛します。

履歴のないデータの予測が可能に

会場では Amazon Forecast の新しい機能として、コールドスタート予測機能についても紹介されました。 コールドスタート予測機能は、2022 年 11 月 21 日にブログにて発表がおこなわれた機能です。

履歴データのないアイテムの予測をおこないたい場面で、新しい製品の特徴に類似するアイテムの過去データを利用して予測することができます。最大で 45% 正確な予測を生成できるため、既存製品の情報を読み込ませた上で、これからリリースする新製品が売れそうかどうか、おおよそ判断する材料として利用できそうです。

フルマネージドの機械学習サービスを使いこなす

AWS で機械学習というと SageMaker が真っ先に浮かびます。しかし SageMaker を利用する場合、実用が可能なレベルで予測精度が出せる学習モデルを自分で作成する必要があるため、時間とテクニックを要します。
一方で、Amazon Forecast のようなフルマネージドの機械学習サービスを利用すると、データさえ用意できていれば、学習モデルの作成、チューニングをする作業を比較的短時間で行い予測可能な状態にできるため、アプリケーションの機能として素早く盛り込むことができます。

フルマネージドサービスをうまく活用し、機械学習を含むアプリケーションを素早くリリースできるのも、クラウドサービスの強みですね。