ChatGPTと何が違うの?AWS Summitで初めて知ったAmazon Quick

こんにちは、クラウドエンジニアのパク ジュンハンです。

今回、縁あって初めて AWS Summit Japan 2026 に参加することができました。 雨の日にもかかわらず参加者の方々が多く、現場の熱気がすごかったです。 さまざまなブースやセッションがありましたが、今回は特に セッション AIM202「あなたの新しいエージェンティックなチームメイト、Amazon Quick を知ろう」 について紹介したいと思います。セッション資料はこちらからご確認いただけます。

私はクラウドエンジニアですが、まだ AWS サービスを深く使った経験が多くないため、今回の Summit をきっかけに新しいサービスを知っていこうと思っていました。 Amazon Quick はセッションを聞くまで知らなかったサービスで、今回初めて知ってかなり驚きました。


企業で AI を導入する際の課題

セッションではまず、AI を企業に導入する際に ユーザー企業 が求めるものが少し異なるという点が指摘されました。

  • ユーザーが求めるもの: 業務のコンテキストを理解し、指示するだけでなく実際にアクションを取ってくれる AI
  • 企業が求めるもの: 自社データを自社管理下に置き、安心して使える AI

この 2 つを同時に満たすことが課題だという話でした。

実際に企業が AI を導入する際の大きな壁として、モデルがデータの一部しか見られないという点があります。各アプリのデータを人が直接コピーして AI に渡す作業が、月 40 時間近く発生することもあるとのことです。


Amazon Quick とは?

Amazon Quick は、こうした課題を解決するために作られた 企業向け AI アシスタントサービスです。

  • ユーザーの代わりに実際の行動を実行
  • 散在するデータソースをつなげて必要な情報を整理
  • エンタープライズレベルのセキュリティと信頼性を提供

実際のデモでは、こんな流れが紹介されました。

— ノート PC を開いたらすぐに優先タスクのフラグ整理、ミーティングのブリーフィング資料を自動準備
— Salesforce と財務データを接続し、会話しながら四半期ダッシュボードを作成してチームと共有
午後 — Quick との会話でプレゼン資料を作成し、そのまま PowerPoint で出力
一日の終わり — スケジュールされたエージェントがその日の案件をチェックし、リスク評価・フラグ・更新情報を自動送信


Amazon Quick の主な機能

1. Spaces(共有ワークスペース)

チームのファイル、ダッシュボード、データソースを一か所にまとめてコラボレーションできる空間です。目的やプロジェクトごとに Spaces を作り、そこに AI エージェントを紐づけてチーム全体で活用できます。

2. Deep Research(ディープリサーチ)

社内文書と外部検索を組み合わせてカスタムレポートを作成してくれます。社内情報をもとにしたレポート作成に特に有用です。

3. Quick Sight(データ可視化・BI)

あちこちに散らばったデータを一か所にまとめてダッシュボードやチャートで表示します。別途 BI ツールなしでデータを可視化・分析できます。

4. Quick Flows(自動化)

Slack、Salesforce、Jira など 40 以上のツールと連携して業務を自動化します。ノーコードで簡単に自動化を構成でき、スケジュールや条件をトリガーに自動実行されます。繰り返し業務を減らし、本来注力すべき仕事に集中できます。

5. Quick Automate(高度な自動化)

複雑なマルチステップワークフローを処理する本格的なオーケストレーションツールです。複数のシステムや担当者をまたぐ作業を条件分岐も含めて自動実行します。完全に任せるのではなく、途中で確認しながら進める human-in-the-loop 方式もサポートしています。

6. Quick Apps(アプリ作成)

やりたいことを言葉で伝えるだけでアプリを作れます。改善したいアイデアが浮かんだらすぐにアプリとして形にできます。


どこでも使える Amazon Quick

Amazon Quick は特定の画面に入らないと使えないのではなく、毎日使う環境のどこからでも呼び出して使えるように開発されています。

  • ブラウザインターフェース
  • モバイルアプリ
  • ウェブ拡張機能
  • デスクトップアプリ(2026 年 4 月末にプレビュー公開、東京リージョン対応)

デスクトップアプリではコンピュータのファイルを操作したり、キーワードではなくセマンティック検索でファイルを探したりできます。また メモリグラフ(Knowledge Graph) 機能によって、同じ名前で呼ばれる人でも自分との関係性をきちんと理解して回答してくれます。


エンタープライズグレードのセキュリティ

Amazon Quick のセッションで強調されていた点のひとつがセキュリティでした。

  • 通信の暗号化および VPC 分離
  • データ削除時の完全消去
  • 顧客データはサービス・モデルの改善に使用しない
  • カスタム権限管理によるユーザーごとのデータアクセス制御
  • ハルシネーション防止のためのガードレール提供
  • CloudWatch によるログ確認
  • CloudTrail による監査ログのサポート

企業側が最も気にする 「自分のデータが学習に使われないか」 という点を明確に示してくれたのがよかったです。


無料で始められる

Amazon Quick はクレジットカードも AWS アカウントも不要で無料で始めることができます。企業環境でエンタープライズ機能を使いたい場合は別途プランもあります。


ChatGPT や Claude と何が違うの?

セッションをひと通り聞いて、ひとつ疑問が浮かびました。 「ChatGPT、Claude、Gemini といった AI と何が違うんだろう?」 セッションでは触れられていなかった内容なので、個人的に少し調べてみました。

結論は 「モデルや機能の差」ではなく「誰のために、どう設計されているかの差」 です。

1. 設計の目的が違う — 個人向け vs 企業向け ChatGPT や Claude は個人が使うことを前提に設計されたツールです。一方 Amazon Quick は最初から組織全体での利用を前提に設計されており、IAM による権限管理、VPC 分離、CloudTrail による監査ログなど、企業のセキュリティ要件をそのまま満たせる作りになっています。また、企業のデータソース(Slack、Salesforce、Jira など)に常時接続した状態で動作し、誰がどのデータにアクセスできるかを組織単位で管理できます。

2. 「答える道具」ではなく「業務に組み込まれている」 ChatGPT や Claude も現在はエージェント機能を持っていますが、基本的には「使いたいときに使う道具」です。Amazon Quick は毎朝のブリーフィング資料の自動生成やリスク評価など、日常業務のフローそのものに組み込まれることを前提にしています。単発の質問応答ではなく、業務プロセス全体を継続的にサポートするイメージです。

一言でいうと、ChatGPT/Claude は「必要なときに呼び出す AI」Amazon Quick は「チームの一員として業務に常駐している AI」 という印象でした。


おわりに

正直、最初にセッションのタイトルを見たときは「Amazon Quick って何?」という感じでした。なんとなくチャットボットサービスかなと思っていたのですが、実際には 散在するデータをまとめて整理し、会話を通じて実際の行動まで実行し、企業向けセキュリティも備えた かなり実用的なサービスだということがわかりました。

特に 「質問への回答を得るだけでなく、実際の行動で成果物を出す」 というコンセプトが印象的でした。 AI が アシスタントからエージェントへ と進化していく流れを、Summit の現場で直接感じることができました。

また新しいサービスを学ぶ機会があれば、こうしてシェアしていきたいと思います。読んでいただきありがとうございました!