回復力を高めて燃え尽き症候群を防ぐ方法(re:Invent 2022のセッション紹介)

本記事は「Japan AWS Ambassador Advent Calendar 2022」の24日目の記事です。

インフラ担当の柴田です。 さて、昨日の大竹さんの記事はもう読まれましたか?AWS Well-Architected Frameworkと言えば大竹さん。私もJAWS DAYS 2022見てました。

ということで、今回はre:Invent 2022のセッションの中から、「How to increase resilience and prevent burnout (INO103)」を紹介します。 burnout(燃え尽き症候群)という言葉を見聞きしたことがある人は多いのではと思います。この記事をきっかけにAmazonの社員がどうやって個人の回復力を高めて、燃え尽き症候群を防いでいるのか、興味を持って貰えると嬉しいです。

燃え尽き症候群

働く人のメンタルヘルス·ポータルサイト「こころの耳」では、燃え尽き症候群について次のように紹介しています。

アメリカの心理学者フロイデンバーガーが1980年に提唱した概念で、それまで人一倍活発に仕事をしていた人が、なんらかのきっかけで、あたかも燃え尽きるように活力を失ったときに示す心身の疲労症状をいいます。

https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1693/

近年はパンデミックの影響でより問題になっているようで、海外の調査ですが、2021年のIndeedの調査では、52%の従業員が燃え尽き症候群を感じていると回答し、2022年のFuture Forumの調査では、デスクワーカーの40%が燃え尽き症候群を感じていると回答しています。

How to increase resilience and prevent burnout (INO103)

re:Invent 2022のAmazonとAWSのイノベーションを紹介するセッションの中に「How to increase resilience and prevent burnout (INO103)」というセッションがあります。

www.youtube.com

このセクションではタイトルにあるように、燃え尽き症候群を防ぐためのテクニックが多数紹介されています。

なぜAWSが燃え尽き症候群の話をしているのか?

INOという接頭辞がついているセッションは、AmazonやAWSのイノベーションに関するセッションです。つまり、このセッションはAmazonやAWSのイノベーションを紹介しています。

燃え尽き症候群の紹介であったように、近年はパンデミックにより燃え尽き症候群を感じている人が増え、Amazonでもそれは同じでした。 Amazonのイノベーションのカルチャーから学び、AWSが見つけたのが、イノベーションの観点から人々がどのように影響を受けるのかを考えないといかないということでした。 そして、Rich Hua氏がEQに関するプログラムを設立し、今はEmotional Intelligence (EQ)とEPIC Leadership Programとして運営されています。

このセッションではEQがなぜ重要なのか、Amazonが認識したこととAmazonの従業員やリーダーたちをサポートしてきたEPIC Leadership Programというイノベーションプログラムの一部をもとに、個人の回復力を高め、燃え尽き症候群を防止するテクニックを紹介しています。

1. EQ

このセッションで重要なのがemotional intelligence (EQ)です。セッションの説明によると、EQを簡単に言えば、感情の賢い使い方です。そして、EQを重要視しているのは、10歳前後で固定されてしまうIQやパーソナリティとは違い、EQはテクニックで改善できるからです。

感情を正しくコントロールすることの重要さが分かる1つの例として、感情が行動に与える影響について紹介されています。

The influence of emotions (セッション動画より)

Yale大学のDr. Marc Brackettの研究によると、次のような私たちの行動の90〜100%に感情の影響があるとのことです。

  • 注意力
  • 意思決定
  • パフォーマンスと創造性
  • 関係
  • 身体的および精神的な健康

つまり、例えば不適切な感情のもと決定した意思決定は、正しくない判断をしているかもしれませんし、適切な感情のもとであれば気づけた問題を見落とすかもしれません。 そのため、感情を使いこなすテクニックが重要となります。

感情の粒度

感情を使いこなすテクニックとして紹介されているのが、感情に名前をつけることです。 平均的な大人は3つの感情に名前をつけることができるそうです、日本で言えば喜怒哀楽でしょうか(なんとなく喜と楽がかぶってるイメージ)。 ただし、求められているのはもっと細かい粒度です。もっと細かくといわれても難しいのではと思いますが、そのためのツールとしてMood Meterと呼ばれるアプリケーションが紹介されています。

Mood Meter (セッション動画より)

Mood Meterでは100の感情を表す言葉と4つのゾーンが存在しています。言葉によって自分がいまどのゾーンにいるかがわかり、行動のヒントになります。 例えば「Happy」であれば、イエローゾーンで元気もあり、心地よい気分ですので仕事するのに良さそうです。一方「Angry」であれば、レッドゾーンで強いエネルギーと高い不快感を感じているので、何か回復を図る必要があるというのが分かります。

とはいえ、100の言葉の中に今のあなたの感情にぴったりの言葉は無いかもしれません。そのようなときは、自分の感情を自分の言葉で表現するようにします。そうすることで、感情に気づくことができます。 私がこの感情の粒度で大切だと考えているのは、今どういう感情なのかという状態を認識することです。そして感情に名前をつけるという作業は感情を認識しやすくさせるのだと考えます。 今の感情の状態が分かれば、次は今の状態にとどまりたいのか、それとも抜け出して別の状態になりたいのかを決断できます。

2. 回復力を高める

回復力を高めるために、様々な研究に基づくアイデアが紹介されています。そこで一部を紹介していきます。

Tip #1 回復の種類

Know the type of recovery (セッション動画より)

回復する方法に焦点をあてた、3Mフレームワークというものが紹介されていました。 Macro recoveryでは1日休みをとり、Meso recoveryでは1〜2時間程度の休憩をとります。Micro recoveryではほんの数分です。

最初Macro recoveryを聞いたとき、それは単に日曜日では?と思ったのですが多分仕事のことを完全に忘れて休むといのがポイントなのかなと思い直しました。休みでも時々、あの仕事どうだったっけなどと思い返すことがあるのでそういうのをやめるべきなのかなと。

Micro recoveryについては、すぐに使えるアクティビティとしてボックスプレスが紹介されました、4秒間息を吸い、4秒間息を止める、4秒間息を吐き、4秒息を止める。この作業を数回繰り返すというものです。 1分程度この呼吸法を行うことで、オキシトシンを増やし、副交感神経を活性化させリラックスができます。

Tip #2 回復に焦点を当ててエネルギーを管理する

Manage your energy by focusing on recovery (セッション動画より)

回復に集中することも重要として、そこに自然なサイクルを活用することを提案しています。例えば1日3回90分集中できる期間があるので、午前中に1つ午後に2つ取得しようとします。また昼食後少しだるいタイミングではミーティングするのに良いと紹介しています。ポイントは、一生懸命働くというのではなく、効率的に作業するということです。

また、全ての会議に「参加」と言わないというのが紹介されてました、全てに「参加」としてしまうと、朝から晩まで休憩なしで過ごすことになります。それは燃え尽き症候群への第一歩です。無慈悲に優先順位をつけることがおすすめされていました、これは、Meso recoveryやMicro recoveryの時間をとり、効率的に働くのに必要な作業だからです。

Tip #3 毎日笑おう

Get your daily dose of laughter (セッション動画より)

平均的な大人は1日15回笑うそうです。一方で子どもは1日400回笑うらしく大きな差があります。そして笑うということは、エンドルフィンを出し、免疫システムを助けるなど様々な効用があります。 (ということで、セッションではジョークが披露されるているのですが、笑うポイントが分からず……どのようなジョークかはぜひご自身でお確かめください)

3. 共感を改善する

回復力を高めることと並列で、共感を改善する方法についても紹介されています。 本セッションでは共感を「他人の考えや感情を理解し、共有する能力」と定義し、共感は学習できるのかという質問がされています。皆さんはどう思いますか?

セッションではStanford大学のDr Jamil Zakiの研究によると70%の共感は学習可能であると紹介しています。そしてポイントになるのが、共感には種類があるということです。

3種類の共感

The 3 types of empathy (セッション動画より)

多くの人は共感をEmotinal empathy(感情的な共感)として捉えてるかもしれません、悲しんでいる人がいるから私も悲しいという感じです。 そして、それは苦手なので共感が苦手と考えているのかもしれません。 しかし、論理的で認知的な考え方が得意な方は、もしかするとCognitive empathy(認知的な共感)に慣れているのかもしれません。 悲しんでいることを一緒に悲しむことはできないかもしれません、しかし、なぜ悲しんでいるのかを理解したいと感じることはできる人なのかもしれません。 また、Compassionate empathy(思いやりのある共感)もあります。誰かを助けたいという行動の共感がCompassionate empathyです。悲しんでいる人に何かできることがあるか声をかけることができる人なのかもしれません。

共感を妨げるものは何か

共感を妨げるものとして3つ紹介されています。1つ目は、自らがストレスが多く、燃え尽きそうなときです。自分自身が精一杯では他人の感情に気づくのは難しいです。2つ目は共感することが辛過ぎる場合です、誰かに共感することで自分も同じような辛さを感じてしまうかもしれません。3つ目は技術を持っていないからです。

共感のために

共感を改善するために、誰かが経験していることを学ぶ代わりに、彼らが何を感じて何を考えているのかという視点を持つことが紹介されています。 そして、STARと呼ぶテクニックが紹介されています。Share、Thank、Ask、Rememberの頭文字をとったテクニックで、テレビのトークショーを例にとると、最初にゲストの物語を共有し、次にゲストが来てくれたことを感謝し、ゲストに質問をして、最後にゲストの言葉を思い出すといった形になります。

終わりに

このセッションを見て、私は自分が燃え尽きないために一番大切なことは、自分の感情がどのような状態にあるのかを把握することであり、そのためには自分の感じていることを言葉にすることだと思います。ただ、意外に気持ちを言葉にするというのは私には難しく、逆に言葉にできなさすぎて最終的になんかモヤモヤしているみたいになりそうだなと思いました。

このブログでは紹介できてないテクニックや追加の情報源などが、セッションでは多数紹介されていますので、興味がわいたら是非YouTubeをご覧いただければと思います。

さて、Japan AWS Ambassador Advent Calendar 2022のフィナーレを飾るのはアイレット株式会社の本間さんです。未経験から5年目でAWS Ambassadorになられた方が紹介する、AWSの攻略サイト気になります。