キャリアの大半は偶然によってできている

これはフェンリル デザインとテクノロジー Advent Calendar 2024 24日目の記事です。

インフラ担当の柴田です。今年もAdvent Calendarの季節がやってきました。昨年は何を書くか悩んで「会社のブログに駄文を公開する技術あるいは自分を説得する技術」という記事を投稿しました。

今年はエンジニアっぽいことを書きたいなと思っていたのですが、ネタはおりてこず、社内で話したことのあるキャリア形成に関する理論を紹介します。

キャリアについて考えていますか

さて、皆さんはキャリアについて普段何か考えていたり、目標を持っていたりしますか。 エンジニアの場合は大きく分けて、「マネジメント能力を磨き管理職になる道」と、「技術的な能力を高めて技術専門職になる道」の2つがあると考えられます。 明確な目標は無くても、「将来はマネジメント能力が必要になるかな」とか、「できれば技術専門でやりたいな」と考えている方もいるのでは無いでしょうか。

かくいう私は普段自分のキャリアについて考えることはないのですが、仕事柄キャリアについて考えたり話したりする機会があります。 そのようなとき、私は計画的偶発性理論という、やや矛盾したネーミングの理論が好きなので、機会があれば紹介するようにしています。

計画的偶発性理論とは

計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)*1は、スタンフォード大学のKrumboltz教授らが提唱した理論です。 教授らの調査によると、ビジネスで成功した人たちのキャリアは偶然によるところが大きいと分かりました。 そこから偶然をチャンスと捉え、さらに予期せぬ偶然を待つのではなく、意図的に行動することでチャンスを増やし生かすことを提案しています。

教授らは、計画的偶発性をおこすための行動特性として次の5つのスキルを身につけ、行動することをうながしています。

好奇心
興味や関心がある分野以外にも視野を広げる
持続性
失敗してもあきらめずに努力し続ける
柔軟性
こだわりすぎないで、柔軟に対応する
楽観性
何が起きてもよい方向にいくとポジティブに捉える
冒険心
ときにはリスクを取って行動をする

計画的偶発性理論とEmotional Intelligence

私がEmotional Intelligence(EQ)の話が好きだからかもしれませんが、計画的偶発性理論が提唱する5つのスキルとEQは親和性があると考えています。

たとえば、失敗してもあきらめずに努力し続けるには、自分の感情をコントロールし、ストレスを軽減するような能力が必要です。失敗したことに対して「まだ、上手くないんだ、でも学ぶべきことは分かった」と、失敗を別の視点で捉えられるようになると継続して努力ができます。EQを高めることでこれらの能力が強化され、結果として良いキャリアにつながります。 EQを高める利点については、先日投稿した「re:Invent 2024のEQ関連セッションの紹介」の中で上げているセッションが詳しいので、興味があればぜひご覧ください。

今日からできる望むキャリアを得る方法

計画的偶発性理論では、キャリアに影響するような偶然を生み出す機会を得るために行動することをうながしていますが、具体的に何から始めるのが良いか悩む方もいるかもしれません。 私は、まずは周りの人に自分が興味を持っていることや、将来やってみたいことを話すことから始めると良いと考えています。話すのは苦手という人は、ブログのような文字でのアウトプットも良いと思います。 「情報は発信する人のところに集まる」という話に近いと考えていますが、意外と「○○に興味ありそうな人いますか?」みたいな話はよくあります。 そのようなときに、普段から興味があることを話していると紹介を受けやすくなるのでおすすめです。

キャリアの目標

計画的偶発性理論は、キャリアの多くは偶然によるところが大きいという事実はあるものの、これはキャリアの目標を立てたり計画することを否定するものではありません。むしろ、しっかりと計画をして計画通りに進めつつ、時折発生する偶然を生かすことをすすめています。 キャリアの目標を立てることは、旅行の計画を立てるようなものです。どこに行くのか事前に計画を立てつつも、旅先の出会いに応じて都度予定を変更できます。

最後に

私のこれまでのキャリアを思い返すと、今でこそクラウド領域のテックリードをさせていただいていますが、テックリードになろうとしてなったというよりは、偶然が重なって気づいたらなっていたという感じです。 皆さんはどうだったでしょうか。計画通りの道を歩んでいますか、それとも気づいたら思いもよらない道を歩いていますか。計画的偶発性理論がキャリアを歩むうえでのヒントになれば幸いです。

*1:Mitchell, K. E., Al Levin, S., & Krumboltz, J. D. (1999). Planned happenstance: Constructing unexpected career opportunities. Journal of counseling & Development, 77(2), 115-124.